介護・福祉・医療の営業は、一般企業の営業とは違う
私はもともと、一般企業の営業畑にいました。
新規開拓も、テレアポも、飛び込み営業も経験してきました。営業代行という仕事を始めてからも、さまざまな業種の営業に関わってきました。
その私が、介護・福祉・在宅医療の営業に長く携わってきて、強く思うことがあります。
一般企業の営業とは性質も構造も違う。
ここを理解しないまま、一般企業の営業手法をそのまま持ち込んでも、なかなかうまくいきません。
「売る人」と「買う人」だけでは完結しない
一般的な営業では、商品やサービスを提供する側と、それを購入する側との関係が基本になります。
しかし、介護・福祉・医療では、それだけではありません。
たとえば訪問看護を必要とする人がいる。サービスを利用するのは患者さんや利用者さんです。しかし、その方が自分で訪問看護ステーションを探し、営業担当者と商談し、比較検討して契約するとは限りません。
そこにはケアマネジャーがいたり、病院の地域連携室があったり、医師がいたり、地域包括支援センターがあったりします。障がい福祉なら、相談支援専門員などが関わります。
つまり、サービスを提供する人、サービスを利用する人、そして、その両者を地域でつなぐ人。この三者が存在します。
ここが、一般企業の営業との大きな違いです。
私は「販売活動」より「地域への広報」に近いと考えている
だから私は、この分野の営業を単純な販売活動として捉えていません。
むしろ、地域に自分たちの存在や特徴を知ってもらい、必要になったときに思い出してもらう活動に近いと考えています。
そのために、必要になる前から地域との接点をつくっておく。
これは、私が以前から「営業というより広報活動に近い」と考えてきた理由でもあります。
そして14年間、実際に介護・福祉・在宅医療の営業現場を見続けて、その考えはむしろ強くなりました。
今日訪問したから、明日紹介されるわけではない
一般企業の営業なら、「今買ってもらう」「契約を取る」「商談を前に進める」ことが、営業担当者の大きな目的になるでしょう。
しかし、この業界では少し違います。
今日ケアマネジャーを訪問したからといって、明日利用者さんを紹介してもらえるとは限りません。それどころか、その場では何も起きないことの方が多い。
でも数か月後、ある利用者さんの支援を考えているときに、「そういえば、あそこにこういう事業所があったな」と思い出してもらえることがあります。
そのとき初めて、以前の訪問が意味を持ちます。
「売る」より「想起される」
だから、この業界の営業では、私は「売る」より「想起される」ことが重要だと考えています。
必要になる前から地域との接点を作り、正しく知ってもらう。そして必要な人が現れたとき、「あそこなら相談できるかもしれない」と思い出してもらう。
介護・福祉・医療の営業は、一般企業の営業とは違う。
まず、この構造を理解することから始まる。
これは営業テクニックではなく「構造」の話です
これは、「こう話せば紹介が増える」といった営業テクニックの話ではありません。
この業界で営業や地域連携を考えるのであれば、その前提として理解しておかなければならない構造の話です。
これからこのFIELD NOTEでは、14年間、介護・福祉・在宅医療の営業現場を見てきた中で、私が感じてきたことを少しずつ言葉にしていこうと思います。
成功談だけを書くつもりはありません。うまくいかなかったことも、ケアマネジャーや相談支援専門員、医療機関の方々から教えていただいたことも、営業する側と現場との間にあるズレも書いていきます。
一般企業の営業とは何が違うのか。なぜ「たくさん訪問すれば紹介が増える」と単純には言えないのか。なぜ私は成果を約束する営業をしないのか。なぜMotherは「紹介業」ではないのか。そして、介護・福祉・医療の営業とは、そもそも何なのか。
14年間の現場から、少しずつ言葉にしていきたいと思います。
制度やニュースの解説だけではなく、介護・福祉・在宅医療の営業現場で見て、聞いて、考えてきたことを記録するシリーズです。現場で得た一次情報と経験をもとに、地域連携や営業の本質を考えます。